TL;DR — 懸濁した間質幹細胞の直径は15〜19マイクロメートルで、肺毛細血管は10マイクロメートル以上の粒子を捕捉する。ヒトのデータでは、投与直後に27〜33.5%のシグナルが肺に残る。動物データでは、生存した細胞は24時間後に他の臓器で回収できず、損傷シグナルを人工的に作っても遊走は起きない。治療効果は細胞が死んだ後に引き起こされる免疫調節から生まれ、細胞が病変部位に到達する必要はない。この機序が射程を狭くする。

世間の細胞療法の広告では、長い疾患リストをよく見かける。最近目にしたものには40項目以上が並んでいた。脳梗塞・パーキンソン病・アルツハイマー病・筋萎縮性側索硬化症に加え、糖尿病・心筋梗塞・慢性腎臓病・肺線維症もある。

リストにはさらに歯周病・男性型脱毛症・乳癌術後の回復・COVID-19まで含まれていた。

前の2本の記事では規制の観点からこの問題を取り上げた。届出は承認ではなく、提供計画はそれぞれ特定の疾患に紐づいており、一回照合すればズレは明らかになる

この記事では角度を変える。規制文書を一切見なくても、基本的な生物学の問いに立ち返るだけで、あのリストは成立しないとわかる。

間質幹細胞を一回分静脈に投与したとき、細胞はどこへ行くのか。

私は最近、台湾で細胞療法を展開できる可能性を調べるため、文献を一通り読んだ。いくつかの発見は自分の直感と大きくずれていて、書き留める価値がある。


静脈投与した細胞は、目標臓器に届くのか

最初に、あまりロマンティックでない事実を述べる。この問いの答えは、主として流体力学によって決まる。

懸濁状態の間質幹細胞の直径は約15〜19マイクロメートルだ。この数字は、異なるサイズの蛍光マイクロビーズを用いて肺毛細血管の口径を調べた研究から来ている。4マイクロメートルのビーズはほぼ捕捉されないが、10マイクロメートルと15マイクロメートルのビーズは顕著に捕捉された。同じ研究では、細胞を静脈注射すると「数秒以内にほぼすべての細胞が肺に現れた」ことも記録されている(Schrepfer et al., Transplant Proc 2007, PMID 17362785)。

つまり、肺毛細血管の口径はちょうど細胞サイズの関門になっている。管より細胞の方が太いから詰まる。細胞がどこへ行きたいかとは無関係の話だ。

ヒトの定量データも存在する。ある研究では末期肝硬変の患者4名に放射標識した自己骨髄間質幹細胞を投与し、全身平面スキャンで10日間追跡した。

臓器投与直後第10日
27.0〜33.5%2.0〜5.4%
肝臓0.0〜2.8%13.0〜17.4%
脾臓2.0〜10.2%30.1〜42.2%

(Gholamrezanezhad et al., Nucl Med Biol 2011, PMID 21810549)

この表は注意して読む必要がある。計測しているのは放射活性の分布であり、生存細胞の分布ではない。細胞が死ぬと、標識は細胞断片とともに肝臓・脾臓の細網内皮系によって処理される。これが体内で細胞の残骸を除去するシステムであり、時間とともに肝臓・脾臓のシグナルが上昇する理由でもある。

したがって「第10日に30〜42%が脾臓にある」を「生きた細胞の30〜42%が脾臓にいる」と読んではならない。これらのシグナルは細胞の残骸に由来している可能性が高い。

この限界をあえて書き記すのは、この表が文脈から切り離されると「細胞が全身の臓器に分布する」という誤った根拠に転用されかねないためだ。

体内でどれだけ生存できるか

この問いへの答えはさらに短い。時間単位だ。

あるマウス研究では、尾静脈から細胞を投与し、5分後・1時間後・24時間後・72時間後にそれぞれ屠殺してサンプルを採取した。血液・肺・肝臓・脾臓・腎臓・骨髄を検査した結果は以下のとおりだ。

  • 1時間後、シグナルは主に肺に集中
  • 24時間後、シグナルは主に肝臓に移行
  • 組織培養による回収:生存したドナー由来の細胞は肺で投与後24時間まで回収でき、その後消失
  • 他のいかなる臓器でも、いかなる時点においても、生存細胞は回収されなかった

この研究にはさらに重要な対照実験がある。肝臓の虚血再灌流障害を人工的に誘発しても、生存細胞の肝臓への遊走は起きなかった(Eggenhofer et al., Front Immunol 2012, PMID 23056000)。

この対照実験は、広告で最もよく使われるフレーズ——「幹細胞は自分で傷ついた場所を見つける」——を直接検証している。研究者が意図的に損傷シグナルを作っても、細胞は行かなかった。

別の研究は数字をより具体的に示している。マウスに200万個のヒト間質幹細胞を静脈投与すると、ほとんどが肺に塞栓として詰まり、肺内での半減期は約24時間で、他の6つの組織合計で回収できたのは1,000個未満だった(Lee et al., Cell Stem Cell 2009, PMID 19570514)。

長期的なヒトデータも同じ方向を示している。ある研究では、HLAが不一致の間質幹細胞による治療を受けた18名の剖検材料を検査した。15名から採取した108件の組織をPCRで検査したところ、異所性組織の形成はなく、ドナー由来の悪性腫瘍も認められなかった。8名の患者では肺・リンパ節・腸でドナーDNAが検出されたが、割合は1〜0.1%以下だった。投与後50日以内のサンプル13件中9件で検出されたが、50日を超えたサンプル8件では2件のみだった。研究者はこの機序を一言で表した。hit and runだ(von Bahr et al., Stem Cells 2012, PMID 22553154)。

同論文はさらに、持続的な生着がないことが同時に長期リスクを制限するとも指摘している。これは誠実な両面の観察であり、自分の論点に都合のいい半分だけを引用するつもりはない。

それでも効果があるのはなぜか

ここで合理的な疑問が生まれる。細胞が届かず、長生きもしないなら、なぜ肯定的な結果を示す臨床試験があり、規制承認を取得した製品まであるのか。

答えは、機序が一般的なイメージと異なることにある。

ある研究では、受容者の細胞傷害性T細胞がパーフォリン依存的な経路で間質幹細胞のアポトーシスを誘導することが示された。アポトーシスとは制御された細胞死であり、このアポトーシスの過程が免疫抑制を起動する必要条件となっている。臨床的な相関も確認されている。移植片対宿主病の患者のうち、「投与された細胞に対して高い細胞傷害活性を持つ」グループだけが治療に反応し、低活性グループは反応しなかった。アポトーシスに陥った細胞を貪食した単球が免疫抑制酵素を産生し、最終的に効果をもたらす(Galleu et al., Sci Transl Med 2017, PMID 29141887)。

別の研究は後半部分を補足している。投与24時間後、ほとんどの細胞が死滅し、肺と肝臓の単球に貪食されていた。貪食した単球は機能状態が変化し、免疫抑制分子を発現し、炎症性サイトカインが低下し、制御性T細胞を誘導した。単球こそが免疫調節効果を体内に運ぶ真のキャリアだ(de Witte et al., Stem Cells 2018, PMID 29341339)。

前述のマウス心筋梗塞研究には、直接的な実験が含まれていた。肺に捕捉された細胞はある抗炎症タンパク質を上方制御する。研究者がそのタンパク質の発現を干渉技術で抑えると、細胞は保護効果を失った。一方、その組換えタンパク質を単独で静脈注射すると、治療効果を再現できた(Lee et al., 2009)。

これらを並べると、像が明確になる。間質幹細胞は、植え込まれた組織というよりも、急速に代謝される抗炎症薬に近い。

細胞が死ぬことはプロセスの一部だ。

この機序の射程はどれだけの疾患をカバーできるか

機序を理解すれば、40項目以上のリストにも答えられる。

「細胞が病変部位に到達して組織を修復する」という治療の論理は、これまでのエビデンスによって断ち切られた。残る経路は一つだ。細胞が肺内で死滅・貪食された後、全身性の免疫調節を通じて遠隔臓器に間接的な影響を与えるルートだ。

この経路は機序として成立する。しかし主張の性質を変え、三つの制約をもたらす。

第一に、この機序にできるのは免疫調節であり、直接的な臓器修復ではない。 主張は「炎症を調節する」と書き直さなければならず、「損傷した組織を修復する」とは書けない。

第二に、効果の上限は、その疾患の病理においてどれだけの割合が免疫調節によって修飾できるかに依存する。 認知症のアミロイドとタウタンパク質病理、糖尿病の膵島細胞の喪失、心筋梗塞の壊死心筋——これらの主要病理は一時的な免疫調節一回分では逆転できない。

第三に、適応症ごとに対照試験で個別に証明する必要がある。 「免疫調節作用がある」と「この疾患に臨床的な便益がある」は別の話だ。

あのリストの40数種類の疾患に共通する点はただ一つ、「経過中に炎症がある」ことだ。しかし「疾患経過中に炎症がある」と「炎症を抑えれば疾患が治る」の間には、大きな隔たりがある。同じ論理を使えば、アスピリンでも40数種類の疾患が治せることになってしまう。

下流の現象を共有していても、治療可能な上流の機序を共有しているとはいえない。

説得力のある失敗事例

上記の推論がまだ抽象的に感じるなら、次の事例が全体像を明確にするだろう。

Alofisel(darvadstrocel)は脂肪由来の同種異系間質幹細胞製品で、クローン病患者の複雑性肛門周囲瘻孔を適応症とした。世間の広告よりずっと条件が良かった。

  • 投与方法は瘻孔への局所注射であり、静脈投与ではなく、肺への捕捉を回避できた
  • 適応症は単一で、あれもこれもではない
  • 完全な審査を経て2018年3月23日にEUの販売承認を取得した

その後、568名の患者を対象とした無作為化プラセボ対照確認的試験で主要エンドポイントを達成できなかった。欧州医薬品庁は臨床的便益がもはや使用継続を支持しないと判断し、2024年12月13日に販売承認を取り消した(欧州医薬品庁公式製品ページ)。

この製品は病変部位に直接投与し、単一の適応症に絞り、完全な第3相審査を経てEUの承認を得ていた。それでもより大規模な対照試験で否定された。

では、対照試験を一度も実施せず、静脈投与で、40数種類の疾患を謳う製剤の証拠基盤とは何だろうか。

1,894件の試験でなぜ5件の承認適応症しかないのか

もう一組の数字を見る。

ClinicalTrials.govで間質幹細胞を介入とする介入型臨床試験は1,894件登録されている。

世界の主要市場で承認された間質幹細胞の適応症は約5件だ。

市場製品適応症投与経路状態
米国RYONCIL小児のステロイド抵抗性急性移植片対宿主病静脈2024-12-18 承認
日本TEMCELL HS急性移植片対宿主病静脈2015-09 承認
EUAlofiselクローン病の複雑性肛門周囲瘻孔局所2024-12 承認取消
日本Stemirac脊髄損傷静脈条件付き期限付き承認
韓国Cartistem膝関節軟骨欠損関節腔内2012-01 承認

このうち完全承認(条件付きではない)かつ静脈投与の適応症は、実質的に急性移植片対宿主病だけだ。

米国FDAが承認した間質幹細胞製品は、今日現在RYONCILの一件だけだ。これはFDA公式承認リストを一件ずつ照合した結果だ。リストには52件の細胞・遺伝子治療製品が掲載されており、残りはCAR-T、アデノ随伴ウイルス遺伝子療法、臍帯血造血幹細胞などだ。間質幹細胞製品はこの一件のみだ。

1,800件以上の試験で、5件の承認適応症。千回以上研究されても、通過したものは極めて少ない。

40数種類の疾患への効果が実証されているなら、世界の規制当局が5件しか承認しないはずがない。

「国際基準に適合」が証明するのは細胞の同一性だけ

広告でよく見かける別の主張に「国際細胞・遺伝子治療学会(ISCT)の基準に適合した細胞」というものがある。分解して見る価値がある。

ISCTは2006年に間質基質細胞の三つの最低基準を定めた。標準培養条件下でプラスチックに接着すること、特定の表面マーカーを発現し別のマーカーを発現しないこと、体外で骨芽細胞・脂肪細胞・軟骨芽細胞に分化できることだ(Dominici et al., Cytotherapy 2006, PMID 16923606)。

これら三項目が答える問いは「この細胞集団は間質基質細胞か」というものだ。有効性に関わる項目は一つもない。

ISCTの2019年の見解書にはさらに明確に書かれている。機能的アッセイは「汎用的な定義ではなく、意図する治療機序によって決まる」。つまり疾患ごとに異なるアッセイが必要であり、一種類のアッセイで全てをカバーはできない(Viswanathan et al., Cytotherapy 2019, PMID 31526643)。

安全性の問題もある。2006年のこの三基準が策定された当時、臨床使用の間質幹細胞はほぼ骨髄由来だった。現在市場で大量に使われているのは、臍帯と脂肪由来だ。

ある研究では三つの由来を直接比較した。骨髄由来には組織因子の発現が著しく低いサブグループがあり、凝固促進活性が低いことに対応していた。組織因子は凝固反応に影響する。一方、臍帯と白色脂肪組織由来では組織因子の広範な発現と持続的な血餅形成が見られた

ラットへの静脈注射実験では、組織因子欠損の骨髄細胞は血栓塞栓症を生じなかったが、組織因子を発現する基質細胞は大量の血管内血栓を誘発した。研究者の言葉を借りれば、これは「非造血・血管外由来の基質細胞を無批判に全身投与すること、とりわけそのような由来のものに対して、追加の警鐘を鳴らす」ものだという(Oeller et al., Theranostics 2018, PMID 29507631)。

ISCTの最低基準は今日現在も組織因子と血液適合性の評価を含んでいない。修訂を求める研究チームが存在する(Moll et al., Stem Cells Transl Med 2022, PMID 35641163)。

つまり「ISCT基準に適合」という言葉は、身分証を資格証として使うことに等しい。この細胞集団が間質基質細胞であることは証明できても、有効性は別途証明が必要だ。2026年時点では、この基準は静脈投与の安全性を保証するにも不十分だ。

命名者本人が改名を求めた

これが最も書き留めておきたい点だ。

「間質幹細胞(mesenchymal stem cell)」という名称を最初に提唱したArnold Caplanが、2017年に一本の論文を発表した。タイトルを直訳すれば〈間質幹細胞:改名の時が来た!〉だ。

その理由は学術的な厳密さとは関係ない。論文は直接的に指摘する。これらの細胞が「幹細胞」と呼ばれることで、患者が直接的な医療上の便益を得ると暗示するために使われている、と。患者はこれらの細胞が再生組織の細胞に分化すると想像するからだ。彼は「骨と骨が触れ合う膝」から「認知症を含む各種神経疾患」までの主張を名指しした。彼が提案した新しい名称はMedicinal Signaling Cells、すなわち「薬用シグナル細胞」だ(Caplan, Stem Cells Transl Med 2017, PMID 28452204)。

さらにそれ以前、ISCTは2005年の命名に関する見解書で次のように記している。この細胞集団の生物学的性質は「一般的に認められた幹細胞活性の判断基準を満たさないと思われ、この名称は科学的に不正確であり、一般の人々を誤解させる可能性がある」と(Horwitz et al., Cytotherapy 2005, PMID 16236628)。

これらの言葉はどちらも、この分野の内部から来ている。

結局、間質幹細胞に効果はあるのか

迷信を打ち破るために過度に否定したくはない。この節では肯定的なエビデンスを正確に述べる。

間質幹細胞はステロイド抵抗性急性移植片対宿主病において有効であり、その効果は弱くない。55名の重症患者を対象とした多施設第2相試験では、30名が完全奏効、9名が改善を示した。完全奏効者の1年移植関連死亡率は有意に低く(37%対72%)、2年全生存率は有意に高かった(53%対16%)(Le Blanc et al., Lancet 2008, PMID 18468541。これは単アーム第2相試験であり、無作為化対照試験ではないことを付記する)。

より強いエビデンスは規制の次元にある。米国と日本という独立した厳格な規制機関が、それぞれ異なる時期に同じ適応症で製品を承認している。この複数機関にわたる収束は、どの単一試験よりも重みがある。

この適応症で有効である理由は、これまでの推論全体を裏付けている。移植片対宿主病はまさに全身性のT細胞が媒介する過剰な免疫反応だ。これは間質幹細胞の実証された機序の射程(制御性T細胞の誘導・免疫抑制酵素・単球の極性化)に収まる。

機序が合致すれば効く。合致しなければ効かない。

逆に言えば、機序が合致しそうな適応症でも失敗することがある。COVID-19による急性呼吸窘迫症候群は炎症が駆動しており、理論上は射程内に収まるはずだった。しかしフランスの10施設による無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、主要エンドポイントで2群間に有意差が生じなかった(Monsel et al., Crit Care 2022, PMID 35189925)。

最も成功しそうな方向でさえ失敗しうる。だからこそ「一つの細胞で40数種類の疾患を治す」という主張は、この分野の知見のすべてと相反する。


この記事のまとめ

  1. 懸濁した間質幹細胞の直径は約15〜19マイクロメートルで、肺毛細血管は10マイクロメートル以上の粒子を捕捉する。ヒトのデータでは投与直後に27〜33.5%のシグナルが肺に残る。
  2. 生存細胞は肺内で約24時間後に消失し、他の臓器ではいかなる時点でも回収できない。臓器の損傷シグナルを人工的に作っても遊走は起きない。
  3. 治療効果の機序は細胞の死滅・貪食後に引き起こされる短期的な免疫調節にあり、分化による置換ではない。細胞が死ぬことは機序の一部だ。
  4. この機序の射程は狭い。炎症を修飾できても、アミロイド沈着・細胞の喪失・組織壊死には対処できない。
  5. Alofiselは局所注射・単一適応症・完全承認の製品でありながら、568名の確認的試験で失敗し、2024年12月に承認が取り消された。
  6. ClinicalTrials.govには1,894件の試験が登録されているが、世界の主要市場での承認適応症は約5件、米国FDAが承認した間質幹細胞製品は一件だけだ。
  7. 「ISCT基準に適合」は同一性の問いに答えるもので、有効性には関わらない。この基準は骨髄由来の時代に策定されており、組織因子と血液適合性の評価を含んでいない。
  8. 間質幹細胞は急性移植片対宿主病において確かに有効であり、米国と日本の規制機関がそれぞれ承認している。これは機序の合致を反映している。

付記:この記事が主張していないこと

このような記事には、論証の強度を上げるために言い過ぎるリスクがある。以下は調べたが証拠が不十分で主張できない点を、合わせて記しておく。

  • 「間質幹細胞の静脈投与に起因する死亡」を明確に帰属した査読済みの症例報告は見つけられなかった。 機序の観点からは動物実験で血栓リスクのエビデンスがあり(ラットで大量の血管内血栓)、臨床的にも血栓塞栓性合併症の症例報告がレビューに言及されているが、死亡例を一次文献から確認できなかったため、この記事ではそのような主張をしない。
  • 腫瘍形成リスクを支持する臨床エビデンスは現時点では存在しない。 剖検研究でドナー由来の腫瘍は見つからず、メタアナリシスでも悪性腫瘍リスクの上昇は認められていない。ただしFDAは承認書において異所性組織形成事象を3年間の加速報告対象としており、規制当局が長期的な不確実性を完全には排除していないことを示している。
  • 管理された試験において適切に製造された製品を用いた場合、間質幹細胞の静脈投与の安全性記録は許容できる範囲にある。55件の無作為化対照試験・2,696名を対象としたメタアナリシスで有意に上昇したのは一過性の発熱だけだった。この結論を出所不明・製造工程が管理されていない製品に外挿することはできないが、触れずに済ませてもいけない。

参考文献

以下は本文中の登場順に並べた。すべての文献は査読済み学術誌掲載のもので、規制文書は監督当局の公式ページを出典とする。

生体内分布と生存時間

  • Schrepfer S, et al. Stem cell transplantation: the lung barrier. Transplant Proc. 2007. PMID 17362785. https://doi.org/10.1016/j.transproceed.2006.12.019(細胞直径15〜19マイクロメートル・肺毛細血管が10マイクロメートル以上の粒子を捕捉)
  • Gholamrezanezhad A, et al. In vivo tracking of ¹¹¹In-oxine labeled mesenchymal stem cells following infusion in patients with advanced cirrhosis. Nucl Med Biol. 2011. PMID 21810549. https://doi.org/10.1016/j.nucmedbio.2011.03.008(ヒトの定量データ、投与直後の肺への集積27.0〜33.5%)
  • Eggenhofer E, et al. Mesenchymal stem cells are short-lived and do not migrate beyond the lungs after intravenous infusion. Front Immunol. 2012. PMID 23056000. https://doi.org/10.3389/fimmu.2012.00297(24時間後に他臓器で生存細胞が回収できない・肝障害誘発でも遊走なし)
  • Lee RH, et al. Intravenous hMSCs improve myocardial infarction in mice because cells embolized in lung are activated to secrete the anti-inflammatory protein TSG-6. Cell Stem Cell. 2009. PMID 19570514. https://doi.org/10.1016/j.stem.2009.05.003(肺内半減期約24時間・組換えタンパク質単独投与で効果再現)
  • von Bahr L, et al. Analysis of tissues following mesenchymal stromal cell therapy in humans indicates limited long-term engraftment and no ectopic tissue formation. Stem Cells. 2012. PMID 22553154. https://doi.org/10.1002/stem.1118(18名の剖検・hit and run)

作用機序

  • Galleu A, et al. Apoptosis in mesenchymal stromal cells induces in vivo recipient-mediated immunomodulation. Sci Transl Med. 2017. PMID 29141887. https://doi.org/10.1126/scitranslmed.aam7828(細胞のアポトーシスが免疫抑制起動の必要条件)
  • de Witte SFH, et al. Immunomodulation by therapeutic mesenchymal stromal cells (MSC) is triggered through phagocytosis of MSC by monocytic cells. Stem Cells. 2018. PMID 29341339. https://doi.org/10.1002/stem.2779(単球が免疫調節の実際のキャリア)

規制の現状

命名と基準

  • Horwitz EM, et al. Clarification of the nomenclature for MSC: The International Society for Cellular Therapy position statement. Cytotherapy. 2005. PMID 16236628. https://doi.org/10.1080/14653240500319234(「科学的に不正確であり、一般の人々を誤解させる可能性がある」)
  • Dominici M, et al. Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells. Cytotherapy. 2006. PMID 16923606. https://doi.org/10.1080/14653240600855905(三つの最低基準)
  • Viswanathan S, et al. Mesenchymal stem versus stromal cells: ISCT MSC committee position statement on nomenclature. Cytotherapy. 2019. PMID 31526643. https://doi.org/10.1016/j.jcyt.2019.08.002
  • Caplan AI. Mesenchymal Stem Cells: Time to Change the Name! Stem Cells Transl Med. 2017. PMID 28452204. https://doi.org/10.1002/sctm.17-0051(命名者本人が改名を提唱)

安全性

  • Oeller M, et al. Selection of tissue factor-deficient cell transplants as a novel strategy for improving hemocompatibility of human bone marrow stromal cells. Theranostics. 2018. PMID 29507631. https://doi.org/10.7150/thno.21906(臍帯・脂肪由来の組織因子発現と血栓リスク)
  • Moll G, et al. Improved MSC minimal criteria to maximize patient safety. Stem Cells Transl Med. 2022. PMID 35641163. https://doi.org/10.1093/stcltm/szab005(最低基準への組織因子・血液適合性評価の追加を求める)
  • Thompson M, et al. Cell therapy with intravascular administration of mesenchymal stromal cells continues to appear safe: an updated systematic review and meta-analysis. EClinicalMedicine. 2020. PMID 31989101. https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2019.100249(55件の無作為化対照試験・2,696名・有意に上昇したのは一過性発熱のみ)

有効性のエビデンス

  • Le Blanc K, et al. Mesenchymal stem cells for treatment of steroid-resistant, severe, acute graft-versus-host disease: a phase II study. Lancet. 2008. PMID 18468541. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(08)60690-X(単アーム第2相試験)
  • Monsel A, et al. Treatment of COVID-19-associated ARDS with mesenchymal stromal cells: a multicenter randomized double-blind trial (STROMA-CoV-2). Crit Care. 2022. PMID 35189925. https://doi.org/10.1186/s13054-022-03930-4(主要エンドポイントで有意差なし)

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